子どもを産んで、お母さんが感じることといえば、不安感や孤独感があるのではないでしょうか。まだ子育て前の方にとって、かわいい子どもを授かって、常に自分を必要としてくれる存在ができたにも関わらず、孤独を感じる、というのは不思議に思うかもしれません。
育児はとくにお母さんの責任が重大とみなされます。絶えず目配り心配りをしなければ、生きていくことができない存在と、24時間365日過ごすということは、お母さんにとって気がやすまる時がなくまた、家庭において全く同じ立ち位置の人がいません。
一番悩みを共有できるはずの夫は仕事中心、また、育児は千差万別、同じ親であっても悩みを共有できる相手がみつかるとは限らず、加えて、育児にはこれ、という正解もないため、孤独と不安をかかえることもしばしばなのです。
そんな孤独や不安に陥りがちの育児において、どのような考え方をもつと良いかを、交流分析トレーナーの立場から、また、サービス業で単身赴任の夫をもち、ワンオペで二人の手のかかる子育てをしてきた母親の立場から、お伝えします。孤独感や不安感でいっぱいのママさん達の一助になればと思います。
育児で孤独感・不安感を感じる場合の対処法
1.孤独や不安であることを一旦受け入れる
まずはじめに、孤独や不安は、あってよいものととらえる、ということが一番です。実は私たちのように、孤独や不安であることにストレスを感じやすい人は、孤独であってはいけない、不安とは感じてはいけないものだ、という価値観を根底にもっている場合があるのです。
ですから、いろんなつながりをもっている人がうらやましく思えたり、よその家庭はうまくいっているのに、というように、周りと比べて自分が不幸せのように感じてしまうことも少なくありません。そんなときに効く考え方のひとつが、不安や孤独は誰にでもあって当たり前である、という考え方です。
私たちが不安感や孤独感を感じるのは、人間の進化の特性上、それが必要だったからなのです。人類が生きていく上で、特に狩りをしていたような古代には、一人でいるよりも、群れでいた方が生き延び安い環境でした。また、むやみやたらと知識も無く行動してしまうよりも、警戒心をもつことが、命の保全に直結していました。
ところが現代は、もちろん、さまざまな人の恩恵を受けて生きてはいますが、おひとりさま、という言葉も流行ったように、一人で過ごすことは、それほど生命にとって危険とは限りませんね。ですから、孤独や不安を感じたときは、まず、この感情は誰にでもあって当然なものなんだ、と受け入れてしまうこと。その上で、孤独でも不安でも大丈夫なんだ、と考えていくことが、生きやすさにつながってくることを覚えておいていただきたいと思います。
2.家族との関係、自分との関係
次に大きく関わってくるのが、ご主人や家族との関係ではないでしょうか。第一線で子育てをしている自分と、子育てはメインでなく、外での仕事がメインである、夫や家族。ここに対して、自分と同じように子育てについて考えて欲しい、というのは、土台無理な話です。
私自身、夫に対しては、二人の子どもなのに、自分ばかりが子育てに人生の大半を費やし、夫は今までと変わらぬ生活ができることに理不尽さを感じたモノです。ここをあまりに突き詰めてしまうと、夫婦間はうまくいきません。これは、役割分担、と割り切ることが大切です。その上で、休日などに夫にしてもらいたいことなどを、言葉できちんと伝えるほうが、うまくいくのです。
次が、自分自身との関係、自分の中の葛藤への対処法です。
特にキャリア思考の女性にとっては、同じ時期に入社した男性社員が、結婚後も順調にキャリアを積み重ねていくのに対し、自分は子育てのために諦めることも多く、自己価値が低下してしまうこともあります。もちろん、預ける先があったり、夫が育児にも協力的な場合は、仕事も諦める必要はありませんが、現在の社会的にも、まだ家事育児は母親の仕事という風潮も根強く、どうしても母親である自分が仕事をセーブしないといけない、ということも多々あります。
また、そうでなくても子育てや家事は結果や成果もみえにくく、自分への価値を見いだせなくなります。また、意思疎通のできない子どもとだけ過ごしていて、一日誰とも大人と会話をしないなどの環境にいると、どれだけ子どもがかわいくても、社会から取り残されたような孤独感を感じてしまいます。そして、自由に自分の時間を使える夫に対して不満も募ります。
こういった不安や不満を夫にぶつけすぎてしまうことで、自分だって頑張っているのにわかってくれない!自分ばかりが大変!とお互いが不満を募らせ、夫婦関係が破綻してしまうこともあります。まずは、母親は子どもを産んだら、15年はほどは新しい魂をこの世に送り出す、尊いボランティアである、というように捉えると良いそうです。これは実は、江原さんの本にあった言葉です。母である自分自身が、自分がしている子育ては尊い仕事、とまず捉えることで、自分への価値がしっかりともてるようになるのです。
また、逆にとらえると、子どもと密に過ごすことができない夫も、かわいそうといえばかわいそうな存在です。家族のために働いても、お金さえ入れてくれればいい、というような、ATM扱いをされてしまう場合すらあります。二度と無い子育ての時期を、思い切り楽しむ考え方に切り替えてしまうことも、ひとつです。
3.悩みを共有する
子育て中において重要なのは、やはり共感し合える仲間作りです。孤独を受け入れる、ということと、誰とも関わらない、ということは違います。自分だけでもきちんと自立しているけれど、共有し合える相手がいれば、人生はより豊かになるからです。
いまの時代は、実際に会うことがなくても、SNSなどで簡単に仲間とつながることができます。ちょっとした愚痴を吐き出せたり、同じ悩みをもつ人などと情報を共有することもできますので、自分に合った居場所を見つけておくことがおすすめです。
もちろん、地域のコミュニティや、近所や保育園などのママ友達を作ることも良いのですが、顔の見えない相手だからこそ、悩みを吐き出せたり、変なしがらみもなく、お互い気遣いすぎることもありませんので、そういった場をもっておくことはおすすめです。
また、自分への価値観が下がってしまう人は、お料理や子育てのブログやインスタなどで、自分の成果を目に見えるものに変換するのもアリです。夫や家族が当たり前と思っていることも、実はとても素晴らしかったり、頑張っていると評価してもらうことができる場合もあります。
ただし、イイね集めはしすぎないように注意です。承認欲求は、多少であれば人から満たしてもらうことも良いのですが、あまりにも周りからの承認を求めすぎると、結果に一喜一憂してしまい、逆に幸福度はさがってしまうからです。ほどほどに楽しみましょう。
また、同じママ同士でも、子どもの悩みが違ったり、親と同居しているか、仕事をもっているかなどで、立場が違うゆえに、話や意見が合わない相手というのはいるものです。すべての人と仲良くする必要はありませんので、共感しあえる相手とお付き合いすればよいのです。
独身時代の友人や、子育て世代でない相手とは、お互いに悩みの内容が変わってしまったり、立場が変化することで、意見がぶつかるなどといった違和感もでてきやすくなります。そんなときは、少しの間、距離をおくこともおすすめです。いずれまた、子育てが一段落したときなどに、連絡をとりあえば、昔話に花も咲きます。いまがすべてではありませんので、焦らないことが肝心です。
4.自分の時間を大切にする
この「自分の時間をつくる」、というのは、実は一番大切なことかもしれません。どうしても子どものことに振り回され、どんどん自分の時間はなくなります。それでも、朝の一時間や、子どもがお昼寝をする一時間は自分のために好きなことをする時間にする、とか、または、週に一回だけでも、夫や家族に子どもを見てもらい、自分だけで買い物やお茶をする時間をとる、などを心がけていただきたいのです。
夫や、周囲にも、「その時間があれば、またリフレッシュして家事育児を頑張ることができる」という気持ちなどをきちんと伝えるようにして、自分の時間を確保してもらいたいと思います。このリフレッシュの時間こそ、母親、妻、といった役割から解法され、自分本来に戻れる大切な時間であり、この時間をもたないと、なかなか長丁場となる育児を乗り切ることは難しいと言えます。
また、子どもはいつか大人になり、自分の道を歩き出します。そのときのためにも、自分の趣味や好きなことを、少しずつでも続けておくようにするのがおすすめです。意外と子どもが本当に手のかかる時期は短いものです。
育児や家事において、手をかけることが美徳であるとする風潮は、いまだに根強くあります。わたしも、子育て中に自分の好きなことを優先させることに罪悪感がありました。子どもを一番に考えて優先させることこそが、良い母親である、という謎の義務感をもっていました。
他にも、母乳育児のほうが良いとか、布おむつのほうがよい、離乳食は手作りして当たりまえ、3歳までは手元で育てるべきなど、周りからは様々な価値観を押しつけられるものですが、そんなことよりもまず、母親自身が、心身ともに健やかで、機嫌良く、人生を楽しんでいることが、子育てには一番よい影響を与えるのです。それはもう間違いありません。それでなくても十分に家事育児は重労働です。ぜひ、自分が楽になるためのものは積極的に取り入れていただきたいと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。子育ては、孤独と不安との闘いでもありました。特に育てにくい特性をもっていた我が子は、どこに相談して良いか分からなかったり、悩みを共有できる相手も少なかったり、また肝心の夫は単身赴任で、自分だけがこんなに悩んでいる、と苦しくなってしまうことも多々ありました。そんな私が、もっと早くにこういった考え方ができていたら気が楽だったかもしれないな、という点をお伝えさせていただきましたので、参考になれば幸いです。
子育てをして思うのは、子どものため、家族のため、周りからも評価されるため、と一生懸命だったときは、あまり幸せではなかった、ということです。確かに、手もかけていたし、充実してはいたかもしれないのですが、そのときそのときを楽しむ、ということが本当に下手でした。いつも先を考えて、不安になったり、焦ったり。もっと一度しか無い子育て時期を楽しめばよかった、と思います。
皆さんには、まずは、お母さんが、満たされて幸せである道を選んでもらいたい、と感じます。家事なんて手抜きしたっていい、周りから多少変な目で見られたって、自分流を貫いてもいい、もっと、自分自身が、楽しんでしまってよかった、と思います。そんな子育てをぜひめざしてみてくださいね。
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